急増する特殊詐欺の被害を少しでも止めようと、神奈川県警逗子署生活安全課長の甲斐義博警部(53)が落語で高齢者に注意を呼びかけた。逗子市内では1~4月、被害件数は前年の2件から、16件に急増している。
甲斐さんは5年前、自宅近くで落語教室が開かれていることを知り、月に一度通って腕を磨いてきた。
今回は、逗子署が老人会から防犯講話を依頼され、防犯担当の甲斐さんが少しでも話題になれば、とかってでた。
- 「息子さんを逮捕しました」突然の電話 「なぜ」募る母は、面会室で
机でつくった即席の高座に着物姿で上った甲斐さん。「警察ですが、あなたの息子さんが痴漢をして逮捕されました」。10年前、実家の母親が詐欺犯の電話を信じてしまった実話を披露すると、会場はクスクス、フフフと笑いに包まれた。
これが本題に入る前の「まくら」で、一気に寄席の雰囲気に。
「お金を持っているとあの手この手で詐欺犯はだましてきます」。甲斐さんは手ぬぐいをスマホに見立て、25分間、身ぶり手ぶりで熱演。「電話で『お金が戻る』と言われるとうれしくなるけれど、ATMでは絶対に戻りません」と力をこめた。
この日は27人が聴き入った。進藤宣子さん(80)は「滑舌が良くてわかりやすかった」。特殊詐欺は地域で深刻な問題で進藤さんも詐欺犯の電話を3回ほど受けたことがある。「留守電にして気をつけています」
県内の特殊詐欺の被害は今年、4月末までに、前年同期比193件増の729件。被害額は17億5800万円増の30億2600万円に上っている。