Smiley face
「美と殺戮のすべて」から(C) 2022 PARTICIPANT FILM, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
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 ドキュメンタリーやニュースで海外の抗議行動の様子を見るとき、時々思う。日本で、同じ行動がどれだけできるのだろう、と。

 10年ほど前の東京で、学生団体「SEALDs(シールズ)」による大規模なデモがあった際、デモ隊が歩道に一列に並ばされた。5年前の札幌では、演説中の首相にヤジを飛ばした市民が警察に排除された。抗議が、権力に抑圧されてきた。

 思いを打ち明けると、ローラ・ポイトラス監督は「日本の社会について知らないので、批判することは避けたい。けれどこの映画は、普遍的な物語なんです」と答えた。

 米国のとある社会問題に対して、一人の写真家が美術館でデモを開き、社会を動かした。その過程と、写真家の半生をたどる映画「美と殺戮(さつりく)のすべて」が全国で公開中だ。

 社会問題は「オピオイド危機」と言われる。鎮痛剤の依存や過剰摂取で、50万人以上が死亡している。製薬会社を営む富豪一族が流通させた。

 写真家はナン・ゴールディン。写真界のノーベル賞ともいわれるハッセルブラッド国際写真賞を受けている。ポイトラス監督は「キャリアのリスクを冒してまで強大な権力に対峙(たいじ)する彼女に興味をひかれた」と制作のきっかけを振り返る。

 ゴールディンのデモは、いわ…

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