Smiley face
写真・図版
蓮佛美沙子さん=東京都港区、大野洋介撮影

 隣町、なんなら隣の家に住んでいるんじゃないか――。そう思ってもらえるような距離感の芝居がしたいと、常々思っているという。

 なかでも今回は特に、自意識を捨てて臨んだ作品だった。テレ東系のドラマ「私があなたといる理由」(火曜深夜0時30分)で溝端淳平さんとダブル主演し、結婚3年目の30代夫婦を演じている。

蓮佛美沙子がグアムロケでずっと思っていた「どれだけ一緒でも他人」

蓮佛美沙子さんインタビューの一問一答、そのほかの写真はこちらから

 ドラマは、グアムを訪れた20代、30代、50代の、世代の異なる3組の男女の1週間を描く。互いが抱える、悩み、葛藤。旅先という非日常のなかで、それぞれが「2人でいる意味」を見つめ直していく。

 3組の会話を中心に、物語が進む。それはある種、リアリティーショーのようでもある。だからこそ「セリフをセリフと思ってもらいたくないという願望があった」。監督からも、言いたくないセリフがあったら言わなくていい、言い回しも変えていい、と言われたそうだ。

「自分の中の挑戦として、セリフもあまり覚えきらないというか。相手と対峙(たいじ)した時に出てくる言い回しや、心の動きに正直に演じることを今回特に意識しています」

 役柄を通して考えていたのは「他者はどこまでいっても他者」ということ。身近にいて理解したつもりになっていても、相手も自分も変わっていく。「だからこそお互いに話すこと、想像力を持って相手のことを考え、自分のことを伝えることが大事。すれ違ってつらい思いをしたとしても、自分にない視点を知れるし、一人ではできない経験ができる。それは人生の一つの豊かさだなと思います」

 どこか遠い世界のことではなく、自分の物語だと思わせてくれる。自然体でありながら確かな存在感をまとう、彼女の本領が発揮されている。

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