藤井聡太名人(22)=竜王・王位・王座・棋聖・棋王・王将と合わせ七冠=が挑戦者の永瀬拓矢九段(32)を4勝1敗で破って防衛、3連覇を果たした第83期名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛)。2度の千日手指し直しとなったシリーズの各対局のポイントを藤井名人が解説した。
第1局○ リスク負って勝ちに
《振り駒で後手に。角換わり腰掛け銀。3月の棋王戦第3局(千日手局)で挑戦者の増田康宏八段が指した作戦を採用した》
後手は壁銀で悪型、先手は馬を作って手厚いですが、後手は桂馬を手にした攻撃力に期待できるので有力と考えて採用しました。
《勝利を手繰り寄せたのは控室の棋士が全く検討していなかった一手だった》
図は駒得の後手が先手の攻めをしのげるかどうかで、7一の飛車を△8一飛と寄った局面です。代えて△6六角が△7六桂からの詰めろなので有力でしたが、先手玉を中段に逃がして寄せにくい。△8一飛はリスクを負って勝ちにいった手なので印象に残っています。=4月9、10日 ホテル椿山荘東京(東京都文京区)
名人戦の5局を解説する藤井聡太名人
第2局○ ちょっとやけくそ
《後手が飛車先を保留する△3三金型角換わりに》
深く考えたことのない形で意表を突かれました。局面を動かすのが難しく千日手模様になりましたが、永瀬九段から△8五歩と動かれてこちらも意表でした。
《やけくそな応酬?》
△9五歩に▲2五歩(図)の…