義和団事件の賠償金で1929年に創設された東方文化学院東京研究所が研究資料として購入した一対の獅子像。現在は東京大学東洋文化研究所の玄関前に置かれている(左)。右は、京都大学人文科学研究所北白川分館。同学院京都研究所として建てられて以来、中国研究拠点として使われている

 コロナ禍をはさんで5年半ぶりに上海を訪ねた。新型肺炎SARS禍の2003年春、初めて特派員として赴任した思い出深い街だ。今回は、モーターショーを取材するため東京で報道ビザを得て出かけた。

 空港のパスポートコントロールで記者と分かると、係員に少し離れたカウンターに誘導された。目的や宿泊先など細かな質問が続く。数え切れないほど訪れた地なのに、初めての経験だ。15分ほどだったか。対応は丁寧だったが、無事に入国できるまで緊張で体はこわばっていた。

 中国政府は昨年11月から日本人にも一般的には「ノービザ」で30日間の滞在を認めた。ビジネスや観光、民間交流の往来は増えつつある。一方で、メディアに対する警戒は緩めていないことを実感した。

 中国の国家安全を最重視する政策のもと、中国を研究する専門家もまた、「苦しさや困難」に直面している。5月に公表された「日本版中国研究者調査2025」(研究代表者・伊藤亜聖・東京大学准教授)がその断面を明らかにした。

 大学や民間研究機関など57…

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