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石川県輪島市から約200キロ離れた福祉避難所で、被災者の男性と話す紅谷浩之医師(左)
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 2024年1月3日夜。在宅医療専門の医療法人オレンジ(福井県)の紅谷浩之代表(47)らの医療チームは、福井市内から車で8時間かけ、石川県輪島市に入った。

 輪島市内の診療所立ち上げに関わった縁があり、医療者の仲間が多くいた。

 地震発生からまだ2日。翌朝から活動を始めるつもりだったが、立ち寄った市内の避難所には、高齢者を中心に50人ほどがいた。紅谷さんらが医療チームだとわかると、5人から「診てほしい」と頼まれた。

 うち1人の高齢女性は、太ももに大けがをしていた。避難する時にかかった灯油がしみこんだ服を着続けていたため、広い範囲に炎症が起きていた。

 紅谷さんは炎症部分を消毒し、軟膏(なんこう)を塗るなどの応急処置をした。「病院に行けば迷惑になる」と女性は我慢していたようで、家族はほっとした表情で礼を述べた。

 「医療が届いていない」。そう感じると同時に紅谷さんは、高齢者の変化にがくぜんとした。走って避難所に逃げてきたのに、丸2日じっとしていたためか、歩くのも大変になり動けなくなった人がいた。

 在宅医療をしている紅谷さんは、入院をすると生活から切り離されて衰弱が進む高齢者を日頃から多くみてきた。だが、その衰弱の進行の速さに驚かされた。

 輪島市の65歳以上の割合(高齢化率)は5割に迫る。

 「ここまで高齢化が進んだ地域で、今回のような大災害が起きれば、弱った状態の人が避難所に入ることになる。生活の場に医療を届ける在宅医療が、災害直後から避難所で必要になる」

輪島の福祉避難所、2日でいっぱい

 オレンジの医療チームは、障…

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