偏差値の高い大学に入って、高学歴エリートになれば、人生は安泰。それって本当?――。そんな疑問を投げかける本が、4月に刊行された。東京大の卒業生2437人が回答した調査の分析結果をまとめた「『東大卒』の研究」(本田由紀編著、ちくま新書)だ。著者のうち、ともに東京大で研究し、地方出身の女性を分析した久保京子さんと、「大学第一世代」を分析した近藤千洋さんに、調査から浮き彫りになった格差社会の実態を聞いた。

東京大学の安田講堂

地方出身の女性を分析 久保京子さん

 東京大学の女性学生比率は約2割で、少ないことはこれまでも指摘されてきました。特に地方出身の女性は、この10年のうちで最も割合が高かった2023年でも、9%です。私は、卒業生の調査から、地方出身の東大女性とはどのような人かを分析しました。年代による違いを見るため、生まれが1986年より前と以降で分けて分析しました。

 たとえば女性の中でも、東京圏は両親の大卒率が高く、地方出身は母親のフルタイム就業率が高い一方、無就業率が低かったです。小学校までの親の子育ての仕方を見ると、86年生まれ以降の世代では、東京圏が「博物館や美術館に連れて行く」が多い一方、地方出身はお金がかからない「読み聞かせ」が多かった。女性とひとくくりにしても、一枚岩ではありません。

「『東大卒』の研究」の著者の一人、久保京子さん=2025年5月14日午後3時12分、東京都文京区、山本知佳撮影

どうやって地方女性を増やすのか

 この分析は、地方出身の女性がかわいそう、というような話ではありません。大切なのは、どこの出身やどんな属性であろうと、可能性のある人ややる気のある人に、選択肢をどう示すかということです。現状では、地方出身の女性に対し、フォローやプッシュが必要です。

 例えば、東大進学を誰に勧め…

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