熱戦が続く第107回全国高校野球選手権滋賀大会。試合に臨んでいるのは、ベンチ入りした20人の選手だけでない。記録員もチームの一員として戦っている。
- 帰宅部だった私、野球が変えてくれた 高校最後の夏につかんだもの
記録員はマネジャーらが務め、選手と一緒にベンチに入る。机について試合を見ながらスコアをつける。
ただ、中には、立ったままスコアをつける記録員がいる。目に留まった4人の記録員に思いなどを聞いた。
堅田の野々口さん
13日にあった堅田―水口の2回戦。堅田のベンチの最前列で、スコアシートを手にした野々口詩織さん(3年)が「自信持っていけ」などと声を張り上げていた。
チームは「声」が課題だった。だから、自分がベンチの最前列に立って出そう、と考え、いまのスタイルになった。
この日は1点を争う緊迫した展開に。終盤になると「絶対に終わりたくない」という気持ちがあふれ、涙が止まらなかった。
チームは1―2で敗れたが、野々口さんは「3年生8人はみんな欠けることなく、最後まで全力でやり切れた。十分です」と目を赤くして言った。西川史哉監督は「どこに出しても恥ずかしくない、県内で一番のマネジャーです」と目を潤ませた。
北大津の岩崎さん
北大津の岩崎愛実さん(2年)は「選手たちは今までしんどい練習をしてきた。その成長を一番近くで見て感じたいから、前に立っています」。
練習する選手たちの姿を見るのが好きで、応援したくなるという。ただ、試合中に声をかけることはないといい、心の中で応援しているという。チームは昨秋、今春の県大会では初戦敗退だったが、3回戦に進出した。
日野の東川さん
日野の東川愛星(あいら)さん(2年)も「ちょっとでも間近で選手を見たいから」という。
北大津の岩崎さんと同じく、チームでただ1人のマネジャー。「ベンチは大事」といい、自分がつけたスコアを見ながら、相手の打者の情報を選手に伝えるなどしている。
チームは12日の2回戦で膳所に敗れた。東川さんは「負けちゃったけど、いっぱい笑顔を見られた。最後まであきらめていなかったから感動した。来年は甲子園に行けるように頑張ってほしい」とほほ笑んだ。
滋賀短大付の広谷さん
「1年生の最初の頃、練習試合でスコアをつけながら寝そうになった」。滋賀短大付の広谷聖哉菜(さやな)さん(3年)は、そんな経験などから、立ってスコアをつけるようになった。
チームは今春の選抜大会に初出場。広谷さんは甲子園でも記録員を務めた。「選手であろうとマネジャーであろうと、チームワークが大事」といい、今大会ではスコアをつけながら、アイシングの準備などでベンチ内を動き回る。
記録員をしていて気持ちがいい瞬間は、味方の安打を赤ペンでスコアシートに書き入れるときだ。チームは3回戦に進出。2季連続の甲子園出場をめざす。「選抜では敦賀気比にボロ負けしたので、甲子園で1勝して終わりたい」。目線は選手と同じだ。