1994年9月に開港した関西空港が4日、開港から30年を迎えた。
当初、国際ハブ空港としての将来を描いた関空だが、バブル崩壊もあって、もくろみは頓挫。運営は赤字続きで「関西のお荷物」とまで言われた。
その関空がいま、訪日外国人の玄関口として盛り上がりを見せている。
8月半ばの水曜日、午後5時すぎ。そこには、いつものように20人ほどの行列ができていた。
目の前に滑走路を望む関西空港第1ターミナルの国際線出発エリア。「OnigiriBurger(おにぎりバーガー)関西国際空港本店」は、のりとご飯で肉を挟んだ、おにぎり風のメニューで人気の店だ。
中国・上海の大学生ジェイソン・リューさん(20)が選んだのは、神戸牛のステーキを挟む看板商品。ひとつ5500円だが、「2週間の日本旅行の最後だし」と友人とひとつずつ平らげた。
運営会社「おかげさまで」の吉川靖師ブランディングディレクター(61)は「外国人に、本当においしいものの価値を分かってもらえている」と言う。
同社が関空に進出したのは、コロナ禍の2021年。「外国人客はきっと戻る」と赤字覚悟で期間限定の店を出した。
23年12月、ターミナルの改装に合わせて常設店を出した。値段を決めたのは、出店直前だ。
素材と味には自信があった。メニュー開発に協力したのは、外国人にも人気の料理店、京都の「にくの匠(たくみ) 三芳」と、大阪の「鮓(すし) きずな」。「いい素材を使うのだから、きちんとした値段をつけるべきだ」とのアドバイスを得て、思い切って5千円を超える値段をつけた。
構想は当たり、いまでは月に約2万人を集める。売り上げは「出店前の想定の3倍を超えます」。関空で知名度を上げ、海外に進出する将来も見すえる。
日本人が海外に行く玄関から、外国人が日本に来る玄関へ。関空はそんなふうに性格を変えた。
開港翌年の1995年度、関空の国際線旅客の78%は日本人だった。それが2023年度は、79%が外国人だった。
国の出入国管理統計によると、23年に入国した外国人の約25%は関空経由で、31%の成田空港に次ぐ。
外国人頼みにはリスクもある…