証券口座が不正アクセスを受けて乗っ取られ、利用者が知らないうちに株式などが売買される被害が広がっています。金融庁は4月末時点で不正取引が3500件に上り、売買額は3千億円を超えると公表しました。どんな不正が、なぜ起きたのか。個人投資家はどんな防衛策をとるべきなのか。テクノロジー分野に詳しい第一生命経済研究所の柏村祐(たすく)・主席研究員に聞きました。
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――証券口座乗っ取りの被害が止まりません。
「今年に入って主要なネット証券を中心に、証券口座への不正アクセスが確認されています。利用者のログインIDやパスワードを盗み、その情報で証券口座に不正にログインします。そして、本人が知らないうちに勝手に株が売買されてしまっています」
――取引されたのはどんな株ですか。
「株価が安い銘柄です。主に中国企業の株ですが、日本企業の株の取引も確認されています。手口の例はこうです。まず犯人側が、ある中国株を事前に買っておきます。その後、不正にログインして乗っ取った口座にある株などを売却し、代わりにその中国株を大量に購入して価格をつり上げるのです。対象となった株は、短期間で価格が乱高下しています。恐らく犯人側は、株価が高騰したところで売り抜けているのでしょう。乗っ取られた被害者の口座には価値の低い株だけが残り、大きな損失を被ります」
――どうやってIDやパスワードを盗んだのでしょうか。
「多くの場合は、証券会社を…