「自分を変えてくれた本」をテーマに語る水沼尚輝選手(左)=2024年10月23日、新潟市北区の新潟医療福祉大、茂木克信撮影

 「心を成長させるという意味では、本が力になるんじゃないか」。今夏のパリ五輪で日本競泳チームのキャプテンを務めた水沼尚輝(なおき)選手(27)の言葉には、実感がこもっていた。今月9日までの読書週間に合わせ、勤務する新潟医療福祉大学(新潟市)で開かれた講演会でのこと。学生らの前で、「自分を変えてくれた本」をテーマに語った。

 栃木県真岡市出身の水沼選手は、作新学院高校から同大学へと進学した。練習環境に恵まれた東京を拠点とする選手が多い中、地方でも世界と戦えることを証明しようと、卒業後は同大職員としてトレーニングを続けている。

 バタフライの強化に本格的に取り組んだのが大学からという遅咲きで、初めて日本代表に選ばれたのは5年前。先月23日にあった講演会で、当時を「右も左もわからずにトレーニングをしていた」と振り返った。「ものすごいスキルやポテンシャルを持った人がいっぱいいて、自分はレベル的に一番下。『何でああいうことができないんだ』とか、とにかく人と比べてしまった」とも。成績がついてこず、対人関係に悩み、どんどん自分が嫌になっていったという。

 迷いの沼から抜け出すヒントをインターネットで探していたとき、2012年ロンドン五輪で金メダルを獲得し、その後、プロボクサーになった村田諒太さん(38)=23年に現役引退=の記事を見つけた。村田さんは読書家で、「闘う哲学者」と呼ばれた。その記事で村田さんは、他人と比べるのではなく自分と向き合うことで集中力を高めることができるとして、1冊の本を薦めていた。

 「同じアスリートだから読ん…

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