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写真・図版
馬のたてがみ部分=九州歴史資料館
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 古墳に並ぶ埴輪(はにわ)は、単純な円筒形から各種器財、人物や動物まで実にバラエティー豊か。馬の造形もそのひとつで、きらびやかな装飾で身を包んだ姿をよく見かける。ところが、それとは印象を異にする武装した馬形埴輪が昨年、九州で確認された。どんな意味が込められているのだろう。

 北部九州最大の巨大古墳、岩戸山古墳(福岡県八女市)の出土資料で、九州歴史資料館(同県小郡市)が特別展の展示品を精査する過程で確認した。たてがみや脚の付け根、おしりなどの破片が8点で最大33センチ、2~3体分とみられる。甲(よろい)を表現した格子目の線刻があり、全国的にも例がない。1971年の発掘で出土したが、見過ごされていたようだ。

 岩戸山古墳は6世紀前半、大和政権に反旗を翻した地元の大豪族、筑紫君磐井の墓とされ、埴輪のほかにも石で武具や人物をかたどった「石人・石馬」という地域色の強い文化で知られる。

 人間が自在に操れる馬は、現代の戦車にも匹敵する当時最強の〝兵器〟だ。馬用甲冑(かっちゅう)の実物としては、頭部を守る鉄製の冑(かぶと)が大谷古墳(和歌山県)や船原古墳(福岡県)などで見つかっているが、全身を覆う甲はほとんどない。九歴の小嶋篤さんによると、革など腐食する有機質が多かったためではないかともいう。

 ただ、馬甲は北朝鮮に残る高…

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