複数の胎児を妊娠したときに、母体を守るために胎児を減らす「減胎(減数)手術」は、日本では、倫理的な問題もあり長らく議論されてこなかった。約40年前に国内で初めて実施されたが、法的な位置づけはいまもあいまいなまま。社会的な議論を進めることが求められている。

 大阪大の研究チームは、国内初となる臨床研究を実施。10人の妊婦への手術結果をまとめ、技術の確実性や安全性を確認した。研究チームの遠藤誠之・大阪大教授は「公になっていない手術であるがゆえに、手術の成功率や合併症のデータがまったく表に出ていないことが問題。まずは安全な手術について学術界が示すことが重要だ」と、今回の研究の意義を強調する。

 減胎手術は、長野県内の医療機関が1986年に国内で初めて実施を公表。手術が「命の選別につながる」との批判が出るなど倫理的な問題も指摘された。手術を必要とする妊婦は一定数いるにもかかわらず、国内ではガイドラインなどのルールが整備されていない。

「手術が必要な人がいる」前提で体制整備を

 生命倫理に詳しい斎藤有紀子・北里大准教授は「非公式に行われてきた減胎手術の臨床研究が公に始まったことはよかった。生殖医療による多胎妊娠をできる限り減らすことが第一だが、減胎手術が必要な人もいることを前提に医療体制が組まれなければならない」と指摘する。

 今回の研究では、妊婦に対し、心身両面で長期的な支援をしていく必要性も指摘された。妊婦は手術を受けるのかどうか短時間で決断を迫られる。

 実施する際には、どの胎児を…

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