宮城県気仙沼市本吉町の大谷海岸に、海と溶けあうような近さで立つ老舗旅館がある。
20年ほど前、一人の詩人が投宿した。
旅館の女将、鈴木緑さんが「サインを」と渡した色紙に、さらさらとしたためた。
はるかに
まるいちきゅう
なみうちよせる
すなはま
海あおく
洋々と空にとける
館(やかた)
行頭の文字を連ねると宿の名前「はまなす海洋館」になっている。最後の署名まで、まあるくてやわらかな字だ。
谷川俊太郎
色紙にさらりと書いた 言葉がとくんとくんと染みた
本吉町は公民館活動が盛んで…