自民党総裁選では、27日の投開票日が迫るにつれ、各候補が打ち出した政策の「独自色」は薄れてきた。穏当な内容へと軌道修正を繰り返したためだが、各候補の発言を読み解くと、財政や経済成長を巡る考え方の土台は異なることがわかる。国の関与を強めるべきか、ほかの道を探るのか――。ただ、こちらの議論も深まっているとはいいがたい。
各候補が打ち出した政策の独自色は薄れつつある。だが、9人の主張を読み解くと、財政や経済成長を巡る考え方の土台は異なることがわかる。
まず、各候補が主眼をおくのは、暮らしに身近な施策だ。小泉進次郎元環境相や茂木敏充幹事長(68)は転職を活発にすると主張。河野太郎デジタル相(61)は自動運転の実用化を掲げ、高齢者ら交通弱者の移動を助けるという。上川陽子外相(71)は高速鉄道網の拡充を訴える。林芳正官房長官(63)は、音楽やアニメなどのコンテンツ産業を「日本の基幹産業」とみなして育てるという。
「鬼門」の成長戦略
ただ、どれも新味があるとはいいがたい。基本的な方向性は、岸田文雄政権が今夏まとめた「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」にも盛りこまれているからだ。たとえば、雇用政策なら「成長分野への労働移動の円滑化へとシフト」、自動運転は「規制・制度の見直しやシステムの整備を推進」といった具合だ。
その骨太の方針に代表される政府主導の「成長戦略」は、自民党にとって2012年末の政権奪還以来の「鬼門」でもある。
大規模な金融緩和と機動的な財政出動を軸に「アベノミクス」を進めた安倍晋三政権は、政府主導の成長を追い求めた。有望そうな分野を見定めて支援し、企業経営への関与も強めた。JR東海のリニア中央新幹線計画に巨額の融資を決め、採算が見込みづらい原発輸出も推進。企業に賃上げを促す「官製春闘」も定着させた。それでも経済成長率は伸び悩んだ。
後を継いだ菅義偉政権や岸田…