(11日、第107回全国高校野球選手権1回戦 県岐阜商6―3日大山形)
甲子園に非情の雨が降った。
六回の守備が始まる直前、日大山形の本田聖(ほんたひじり)投手(3年)が投球練習を終えようとしたときだった。エースの座を争ってきた小林永和(とわ)投手(3年)から継投したところで、雨脚が強まった。
試合は51分間にわたり中断。再び立ったマウンドは、雨を吸って緩くなっているように感じた。
足の踏ん張りがききにくくなり、いつもより体が開いてしまう。そのため、本来のコントロールを取り戻せなかった。
六回は無失点に抑えたものの、四球が二つ。七回は押し出し四球を与え、2失点した時点で降板した。
「情けないピッチング。悔いが残ります」と、口を固く結んだ。
最速143キロの直球は、打者の手元でグンと伸びる。その球威で押すのが身上だ。山形大会の決勝も、最後の打者は直球で打ち取って優勝を手にした。
苦しいマウンドだった。それでも、キラリと光る1球があった。
七回。県岐阜商の先頭は、岐阜大会で打率5割超の強打者だ。阿部永成(えいせい)捕手(3年)が出した初球のサインは、かわすためのスライダー。首を振った。
投げたのは直球。「どうだ」と言わんばかりに、真ん中の高めに投げてファウルに。本格派の意地を見せた速球だった。2球目も直球でファウル。最後は135キロで打ち取った。
苦境に立たされても、「マウンドに合わせられなかった自分が悪いです」と、言い訳はしなかった。真っ向勝負を貫いた姿は、潔かった。