刑事たちにとって警察犬は欠かせないパートナーだ。警察犬が嗅ぎ分けるにおいの種類は多様化し、その能力が犯人にたどり着く重要な手がかりとなっているためだ。近年は行方不明者の届け出の増加に伴い、捜索に関しても警察犬への期待は大きくなっている。
アスファルトに鼻をすりつけながら、一歩、また一歩と歩みを進める。1頭の黒いラブラドルレトリバーが探しているのは、つまようじの先で垂らした1滴の血液だ。見た目では何もないように見える地面の一点で、クンクンと小刻みに動いていた鼻が止まった。
東京都東大和市にある警視庁の訓練所で昨年11月、警察犬の「スキッパー」が訓練に励んでいた時の様子だ。オスのスキッパーは血液捜索のプロフェッショナル。特定の人物に限らずに血液を探し出すことができる。
殺傷事件、8メートル先に見つけた血痕
2021年に立川市のホテルで2人が殺傷された事件では、逃走した男の行方を追うために出動した。ホテル前の道路は枝分かれし、逃げた方向がわからない状況だったが、8メートル離れた地点で血痕を見つけ、逃走方向が判明。その後、男は逮捕された。
警視庁によると、事件で犯人が逃走した際、犯人の靴跡についた血液のにおいから、逃走方向を割り出せないかと考えたことがきっかけで訓練が始まった。血液捜索犬が誕生したのは、訓練開始から18年後の2011年だった。
鑑識課に33頭いる警察犬のうち、数頭が血液捜索犬として活躍する。警察犬係長の斉藤誠警部は「捜査だけでなく、けがをした行方不明者の捜索など幅広く活躍できると思う」と話す。
警察犬が嗅ぎ分けることができるにおいは多様化している。警視庁鑑識課では1979年に腐敗臭と薬物、99年に銃器のにおいを探せる犬が誕生。2018年には爆発物も加わった。警察庁によると、これら5種類のにおいを探せる犬は、この5年間に13府県で誕生した。
行方不明者の捜索件数、10年前の2倍超
19年に山梨県の山中で小学…