日没後、大屋根リングの上からライトアップされたパビリオンを眺める(左から)母、父、筆者=大阪市此花区、佐藤慈子撮影

夢洲から

 大屋根リングに上がり、風を感じる。「すごい気持ちいい! 気に入ったわ!」と、はしゃぐのは車いすに乗った88歳の母。

 母は55年前も、車いすに乗って万博会場にいた。臨月で、おなかには私がいた。父が車いすを押し、閉幕直前の大阪万博(1970年)を楽しんだらしい。

 その話を聞き、今度は私が車いすを押して万博を案内する番だ、と思った。高齢の母は長時間歩くのは不安だからと、大阪・関西万博に行くのを諦めていた。車いすは友人から借りた。

 父も含め親子3人、通期パス組。すでに6回、万博会場に通い、ブルーインパルスも満喫した。そして、会場内は車いす利用者にとても優しいと感じている。

 パビリオンの入場列に加わろうとすると、スタッフがすぐに気付いて優先レーンに案内してくれる。「ごめんなさい」を連呼してしまう私。どうしても恐縮してしまう。

 会場内にはバリアフリートイレも多く、車いす利用者が一日滞在していても過ごしやすい。街中でも、このような状況が当たり前になることを祈りながら、母を押している。

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 世界中の人々が集まり、連日多彩なイベントが開かれる大阪・関西万博。会場の夢洲(ゆめしま)で取材に駆け回る記者たちが、日々のできごとや感じた悲喜こもごもを伝えます。

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