東海道新幹線の車両づくりのトップメーカーの一つの日立製作所。主力工場の笠戸事業所(山口県下松市)に4月に赴任した佐川哲(あきら)事業所長(54)は、目につかない「縁の下」ではあるが車体に欠かせない床下のモーターへの電気を制御する装置の分野に長く携わってきた。社を挙げて車両の進歩に関わってきた道のりとは。
東海道新幹線60年#インタビュー編
東海道新幹線が10月1日、運行開始から60年を迎えました。速度や乗り心地の「進化」の一方、リニア中央新幹線との共存や自然災害への対応といった新たな課題にも直面しています。深く携わって来た関係者の言葉から、東海道新幹線のいまを探ります
――新幹線開業60年の節目を、当初から関わってきた企業としてどう感じていますか。
「国鉄、JRさんと一緒に私たちの先輩方が開発から携わってきました。それと同時に、色々なメーカーさん、サプライヤーさんとも一緒に作り上げてきました。世界に誇れる技術に60年間貢献できて非常に光栄です」
――新幹線では常に速度アップ、そのためには軽量化が必要で、技術革新を繰り返してきた歴史があります。いちメーカーとしてどのように関わってきましたか。
「車両の分野で言うと、大きく鉄からアルミに変わっていきました。アルミの中でもそのあと(内外2枚の板を使い、柱をなくしつつ強度を高める)ダブルスキン構造になった。社内では新しい溶接技術も取り入れました。そうしてお客様と一緒に軽量の車両を作り上げてきたのです」
「私は元々電車が走るためのパワーを出す主回路の設計者です。半導体を使って交流モーターを回すようになり、その半導体もどんどん変わっていきました。新しい技術を、安全を検証しながら営業運転に入れることを繰り返してきました」
「牛耳ってきた感覚はない」
――茨城県の拠点が長かったと思いますが、新幹線の技術革新の中で個人的に記憶に残るプロジェクトは。
「入社してから多くの新幹線…