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腕の力の弱い子どもでも、お尻でならクラクションを鳴らすことができるという=古賀あさ美さん提供

 車内に取り残された子どもの命を守るためには、どうしたらいいのか――。

 2021年7月、山口県下関市の古賀あさ美さん(46)はテレビのニュースに衝撃を受けた。福岡県中間市で保育園の送迎バス車内に男児(当時5)が取り残され、熱中症で死亡した事件を伝える内容だった。

 原因はバスを運転していた園長らが車内を確認せずドアを施錠したこと。男児は約9時間取り残されていた。

 元々、福岡で幼稚園教諭として勤めていた。中間市の事件は「ありえない」という言葉しか出てこなかった。バス担当の職員が気づけなくても、担任は気づくのではないか。登園したまま、夕方まで誰も気づかないことがあるのかと疑問を感じた。

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園児の亡くなった保育園の駐車場に設けられた献花台。多くの花や菓子、飲み物が置かれた=2025年7月29日、福岡県中間市、城真弓撮影

 ふと、かつての職場で園長に厳しく言われた出来事を思い出した。

 園児が降りて、静かになった送迎バスの車内。前から順に一列ずつ確認していく。何か見落としはないか。座席の下まで念入りに調べる。

 古賀さんが幼稚園に勤めていた頃、先輩に同行して学び、自身でも繰り返してきた送迎バス乗務時の手順だ。

「子どもやったらどうするんか!」

 在職中の8年間で一度だけ…

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