「農業を学ぶのではなく、農業で学ぶ」をテーマに「農業科」の授業に取り組む北海道美唄市の小学校で9日、JT生命誌研究館名誉館長の中村桂子さんが講演した。今月から稲作に取り組む5年生に「農業科」で学んで欲しいことを伝えた。
美唄市の特別アドバイザーを務める中村さんは、農業科が始まった時から、取り組みを見守ってきた。「あなたが生きものであることを学ぶ農業」と題した講演の冒頭、自らの戦争体験を語った。
「家は爆弾で焼けたけど、一番覚えているのは、ちゃんと食べられなかったこと。食べることが一番大事。私たちは生き物だから」
ロシアのウクライナ侵攻など世界各地で続く戦争に触れ、「農業を通して考え、見えてくることがある」と子どもたちに投げかけた。
まず、生命の進化を説明。動物も植物も、細胞やDNAでできている。40億年という長い時間をかけて、今がある。「種類の違いはあるが、命の重みはみな同じ、生き物に上下関係はない」と訴えた。
その上で、人間は一緒に食べる「共食」をする生き物だと紹介。進化の過程で弱い存在だった人間が身につけた能力は、「みんなと同じ気持ちになる『共感』があり、相手を信頼しないとできない」と語りかけた。
最後に中村さんは、改めて農業科で学んでほしいことを子どもたちに伝えた。
「いっしょに食べることができる。人間が持つ素晴らしい力を知ったら、戦争なんてバカバカしいと思う。みんなの農業科が、仲間や命を大切に思うことにつながる勉強になってほしいです」