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フラッグシップ輸出産地の認定証を受け取った藤井敏一会長(中央)ら=2025年2月20日午前10時8分、富山県南砺市荒木、安田琢典撮影
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 農林水産物を継続して輸出している団体を対象に、国が今年度から新たに設けた認定制度で、北陸3県からは富山県内の2団体が選ばれた。

 選ばれたのは、香港や台湾の富裕層を中心に中華圏で人気が高い干し柿を輸出する「富山干柿出荷組合連合会」(南砺市)と、1500トン以上のコシヒカリを欧米や香港などに輸出する「JAみな穂」(入善町)。全国では計80団体が認証を受けた。

 1984年に農事組合法人になった連合会は、実が大きく糖度も高い、同市の特産「三社柿」を自前の工場で加工する。普通の干し柿だけでなく、みずみずしさを残した「あんぽ柿」の人気が高いといい、2024年度は約120農家が生産した計約252万個を輸出した。

 20年度から輸出を始め、初年度の輸出額は3450万円だった。その後、中華圏での売り上げが急増し、23年度は9033万円に達した。だが、24年度は秋口の高温や多雨の影響で害虫が多く、6977万円まで減らした。

 農家の平均年齢は70歳を超えるが、輸出をさらに伸ばそうと、英語と中国語、フランス語表記のリーフレットも作製した。藤井敏一会長は「国内の販売価格の2倍近い値段で輸出することができ、移住してきた若い5農家も意欲的に生産している。認定をきっかけにさらに増産したい」と意気込む。

 JAみな穂は入善、朝日両町で119人の農家が作付けした274ヘクタール分のコシヒカリを輸出に回している。輸出は09年度から行っているが、海外に販路を求めた理由について、水島正順・営農部長は「国は米の生産調整を導入しており、農家の収入を安定化させる上でも、将来的に消費が伸びる海外への輸出が重要だと考えた」と説明する。

 輸出量は右肩上がりで上昇し、24年度産米は1547・7トンの輸出を見込む。24年度からは、暑さに強い同県の品種「富富富(ふふふ)」の輸出も始めた。

 国内では現在、米の流通が滞る「米不足」に陥っており、米価の価格上昇に歯止めがかからない状況だ。

 それでも矢木龍一組合長は「米不足は一時的な最近だけのことだろう。安定的な出荷が可能な輸出を通じ、産地としての誇りを農家が持てれば、さらなる生産意欲の向上につながるだろう」と話す。

 この認定は「フラッグシップ輸出産地」と言い、農林水産省が新たに始めた制度だ。国の「お墨付き」が得られるほか、各種補助事業に優先的に採択されたり、海外バイヤーとの商談会に参加できたりする優遇措置があるという。

 選ばれるための条件はかなりハードルが高い。青果物の場合は直近1年間の輸出額が3千万円を超えること、米は直近1年間の輸出量が1千トンを超えることがそれぞれ求められる。さらに2年以上、継続して輸出している実績と、2カ所以上の国と地域に輸出していることが必須だ。

 同省北陸農政局の郡健次・次長は、北陸の2団体をはじめ、選ばれた全国80団体は「いずれも先駆的な取り組みが光る」と評価。その上で「日本の農林水産物は品質が良く、海外市場で人気が高い。富裕層向けに特化することはもちろん、あえて大衆向けに展開するなど、多彩な戦略を立てて輸出を伸ばしていきたい」と話す。

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