能登豪雨で被災した一帯=2024年9月22日午後1時41分、石川県輪島市門前町浦上、金居達朗撮影

 石川県の能登北部を襲った21日の豪雨では、多くの住民が急な冠水や自宅の浸水の早さに、驚きや恐怖を口にした。山あいで妻と2人で暮らしていた男性は、深まる水の中、流木に体を乗せて難を逃れたと語る。

 石川県輪島市門前町浦上の集落。

 21日午前6時ごろ、竹島忠男さん(76)は、イノシシのわなを確認しようと外に出た。小雨のなか、目に映る風景はいつもと変わらなかった。

 元日の能登半島地震にも耐えた自宅、脇を流れる小川、隣に広がる畑。

竹島忠男さんの家の近くでは流れた樹木が橋に引っかかったままになっていた=2024年9月21日午後6時22分、石川県輪島市門前町浦上、椎木慎太郎撮影

 午前8時ごろ、激しい雨が気になって再び外に出ると、様子は一変していた。川から水があふれ、白菜や大根を植えた畑は茶色い水たまりになっていた。

 その30分ほど前、浦上地区に出された避難指示には気付いていなかった。

 「逃げろ!」

 近所に呼びかけた後、家の向かいにとめた軽トラックに妻の益江さん(74)と乗り込み、エンジンをかけた。すでに前方の道は冠水していた。

 背後からも、川からあふれた水がどんどん押し寄せる。水位は増す一方だった。車での避難を諦めて降りようとするが、水圧のせいかドアは開かなかった。

能登豪雨で被災した一帯=2024年9月22日午後1時39分、石川県輪島市門前町浦上、金居達朗撮影

 ハンドルを回して窓を開け…

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