再調査委員会の答申を受けて会見する元生徒の弁護士=2024年8月9日午後、岩手県庁、佐藤善一撮影

 私立・盛岡誠桜高校(盛岡市)の女子バレー部員だった当時1年生の2人が上級生らからいじめを受けて退学を強いられたとする訴えに対し、岩手県のいじめ再調査委員会は9日、いじめを認定する調査結果を明らかにし、県に答申した。

 再調査結果や元生徒の弁護士によると、2人は2017年春に入学し、女子バレー部に所属していた。2人を含めた1年生部員は、コーチや上級生から「死ね、消えろ、帰れ」「調子こいてんな」などの暴言を吐かれ、にらまれたり無視されたりしていた。同年6月25日には、試合で負けたことに対して上級生から厳しく言われ、複数の1年生が泣き出し、過呼吸になって搬送された生徒もいたという。

 再調査委は、上級生らの暴言や無視をした行為をいじめと認定。このような行為が、部活動の中で下級生に対して日常的に行われていたと推察される、と結論づけた。

 2人は夏休みから登校できなくなり、心的障害も負って、そのまま退学したという。再調査委は、学校側の前提として、「『いじめではない』という意識があり、被害生徒側からの不信感を招き、不登校などにつながっていった可能性は否定できない」と指摘した。

 さらに、学校側が初動の段階でいじめに該当しないと結論を出し、被害者生徒の心情に寄り添った対応が取られていなかったと指摘。いじめ防止対策推進法では、いじめの定義として、被害生徒が「心身の苦痛を感じている」ことを挙げており、学校側の対応は、法の定義と合致していないと批判した。

 被害生徒の転学に絡む対応についても、問題視した。

 学校側は、県外の私立学校への転学を希望した2人について、相手校側に文書で引き抜き行為をしたと抗議し、謝罪を求めた。再調査委は「本来、公表するようなものではない部活動のトラブル内容や被害生徒や保護者との面談内容が文書に含まれ、一方的な見解が述べられているのは極めて不適切だった」と非難した。2人の転学は実現せず、翌春に改めて別の高校に入学したという。

 また、再調査委の調査への協力要請について、学校側が調査報告書を除き、関係書類を破棄したとして回答を拒否した点にも言及した。いじめ防止対策についても回答はなく、「当初から協力の姿勢が得られなかったことは重ねて残念」と指摘した。

 再調査委の境野直樹委員長は「当該生徒の心の傷は今も癒えていない。答申が出たことで解決したとは全然思っていない。今後どうしたらいいのか、この答申が考えるきっかけになってくれたら」と話した。

 答申を受けた県ふるさと振興部の村上宏治部長は「学校に報告書を送り、再発防止に向けた取り組みを促していきたい。学校の対応を見ながら、具体的にどう対応するか考えていきたい」と述べた。

 再調査委の結果について、盛岡誠桜高は「校長が不在にしているので応じられない」とした。(佐藤善一)

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 元生徒側の弁護士は9日、県庁で会見を開いた。草場裕之弁護士は「学校側の対応はあまりにもひどい。いじめに苦しんで、生徒2人が転学を余儀なくされたときに、学校が転学に非協力な態度をとったことをきちんと認定したくれた点は評価したい。学校が再調査委に対して、極めて不誠実、非協力な態度をとったとも厳しく指摘されている。資料を捨てたというのは学校組織としてあるまじき行為だ」と強く批判した。

 いじめが認定されるまで7年かかったことについては「学校側の協力がほとんど得られないことを前提に、傷ついた2人の意向を尊重しながらの調査だったので時間がかかってしまったと思う」と述べた。

 今後について、草場弁護士は「県が学校に対して再発防止策などの適切な措置をとるよう指導してほしいと保護者と申し入れたい」と話した。

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再調査委員会の調査に至る経緯

2017年6月25日 上級生の厳しい叱責(しっせき)で女子バレー部の複数の1年生が大泣きしたり、過呼吸で病院に搬送されたりした

26日 学校が関係者のヒアリング調査を開始(7月7日まで)

7月8日 保護者説明会。学校は「いじめに該当しない」と説明

12月 被害生徒の1人が退学届

18年1月 学校がいじめ対策委員会設置

2月 被害生徒のもう1人が退学届

19年1月 いじめ対策委が最終答申

8月 元生徒2人が県に再調査請求

20年2月 再調査委員会の調査開始

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