山崎史郎さん

 日本の全世帯のうち、半分弱が一人暮らしになる未来がやってくる。国立社会保障・人口問題研究所は、単独世帯の割合が2050年に44・3%になり、特に高齢層で増えると推計している。独居の何が問題なのか。安心して暮らすために何が必要なのか。厚生労働省で介護保険制度の立案や施行などにかかわり、「ミスター介護保険」と呼ばれる内閣官房参与の山崎史郎さんに話を聞いた。

回らなくなった「住宅すごろく」の循環

 ――単独世帯が抱える問題は何だと考えますか。

 「やはり安心して暮らせる住居を確保できるかどうか、が大きな問題です。高齢期のセーフティーネットでは年金が最初に浮かびますが、年金制度だけでは住まいの保障は難しい。家賃や地価は大きな地域差があるのに、基礎年金は月約6万円と全国一律です」

 ――家賃が高い大都市では厳しい、と。

 「そうです。夫婦2人とも国民年金の受給者の場合、配偶者が亡くなって単身になると持ち家のない人たちは困ってしまいます。また、人口が減っている地方では、仮に持ち家があっても買い物などができずに住み替えが必要になります。住まいの保障は、社会保障の今後の大きなテーマとして、国土交通省と厚生労働省が連携して取り組む必要があります」

 ――今後は持ち家の所有率が下がる予想です。

 「戦後の日本は『住宅すごろく』といって、アパートから始まり、最後に一戸建てを持つというコースが基本でした。これが日本経済を底支えしてきたことは確かですが、住居を売って住み替えるには地価が上がり続けることが前提となります。今や人口減少でその循環が回らなくなってきている。また、不安定雇用が多い就職氷河期世代などが今後は高齢期を迎えます」

 ――住まいのない単独世帯をどう支えればいいでしょうか。

 「今の仕組みでは生活保護しかありません。これは最後のセーフティーネットであり、その前の段階から住まいを保障していかなければならない。そのため、一般の民間賃貸住宅も高齢者に貸しやすいように、亡くなった後の問題なども含めて支援する社会システムが必要ということで、住宅セーフティーネット法が今年、改正されました」

お金だけでは自立に結びつかない

 ――住居だけで問題が解決しますか?

 「次の課題として、私はエン…

共有
Exit mobile version