寄り切りで若元春を破った大の里(左)=角野貴之撮影

 (大相撲夏場所初日 11日、両国国技館 ○大の里―●若元春)

 大の里は仕切りの際、深く息を吐き、自らを落ち着かせようとしているようにも見えた。ただでさえ期待と不安が交錯する本場所の初日。「綱とり」がかかるとなれば、なおさらだろう。

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 それでも、立ち合いから冷静だった。

 長いリーチをいかして両手で突き、若元春の上体をおこす。けんか四つの相手に差し勝ち、得意の右四つにした。192㌢、191㌔の体格をいかして一気に前へ詰め寄った。

 若元春には先場所、土を付けられていた。立ち合いで攻め遅れ、相手十分の左差しを許した。「しっかり対処できて良かった。また集中して頑張りたい」。同じ失敗は繰り返さなかった。

 ここまで駆け足で番付を上がってきた。今場所後に横綱昇進を果たせば、初土俵からの所要場所数は13。これは輪島の21を抜き、年6場所制になった1958年以降ではもっとも速い記録になる。

 横綱昇進には2場所連続優勝か、それに準ずる成績が必要になる。先場所を含め幕内での優勝はこれまでに3度。賜杯(しはい)を手にした次の場所での成績は、過去2度とも9勝止まりだった。

 場所前に「大事だ」と語っていた初日を最高の形で乗り切った。高田川審判長(元関脇安芸乃島)は「若元春も何かやろうとしていたが、構わず出た。どんどん前に出れば(綱とりを)期待できる」。24歳による偉業への挑戦が幕を開けた。

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