昨年3月の県議会厚生常任委員会で、入所者の機能低下や低栄養のデータが報告された

連載「もうひとつのやまゆり園」②

 入所者の居室を長時間施錠するなど不適切な支援が発覚した神奈川県立障害者施設「中井やまゆり園」(中井町)。学識経験者らが検証を進めていくなかで、衝撃的なデータが出てきた。

 園の入所者87人のうち27人は低栄養が懸念される段階で、9人は低栄養状態だった。

 県が2023年の春の健康診断の結果をもとに栄養状態を示す指標の一つ「血清アルブミン値」を分析した。

 成人では血液1デシリットル中4.1~5.1グラムが標準とされ、36人が低栄養が懸念される3.9グラムを下回り、うち9人は低栄養状態とされる3.5グラム未満だった。

 園の支援のあり方を検証した外部調査委員会のメンバーで、昨年11月から医務統括に就いた医師の野崎秀次さんは、入所者の体重の推移や診察結果も踏まえ、「嘱託医として様々な障害者施設の相談を受けてきたが、こんな状況は経験したことがない」と話す。

 低栄養状態の入所者は寝たきりに近い状態で、同じ姿勢でいるため「床ずれを注意しないといけないレベル」という。

 低栄養は健康的に生きるために必要な栄養が十分にとれていないと考えられ、長く続くと免疫力や筋力などの低下を招くとされる。

関連ページ やまゆり園事件

 神奈川県は、七つある県立障害者施設のうちの四つに県の花の名を冠し、「やまゆり園」と名づけている。その一つ、津久井やまゆり園(相模原市)で2016年、入所者19人が殺害される事件が起きた。同園を調べる中で、中井やまゆり園でも虐待を含む不適切な支援が行われていたことが発覚。県立の施設で、なぜ障害者を「人間として見ない」支援が横行していたのか。「もうひとつのやまゆり園」を取材した。(連載「もうひとつのやまゆり園」(全7回)はこのページに掲載します)

半数近くが白内障に

 園では17人が入所後に歩くのが難しくなって車いすが必要になった。このうち9人は40~50代だった。

 また、半数近い42人が視力…

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