エースの浦上脩吾主将の投球練習を見つめる斎藤さん(右から2人目)

 第97回選抜高校野球大会(3月18日開幕、阪神甲子園球場)に21世紀枠で出場が決まった長崎県立壱岐高を、元プロ野球日本ハム投手の斎藤佑樹さんが訪れた。

 かつて東京・早稲田実高のエースとして2006年の夏の全国選手権で優勝し、「ハンカチ王子」と呼ばれた。今回は高校野球の専門サイト「バーチャル高校野球」で連載している「未来へのメッセージ」の取材だ。

 訪問したのは2月16日。島南西部・郷ノ浦町の高台にあり、福岡・博多や佐賀・唐津とを結ぶフェリーやジェットフォイルの発着点である郷ノ浦港が望める。前夜からの雨も上がり、朝8時からの練習を斎藤さんはじっと見つめ続けた。

 日曜日だったこともあり、学校内では野球部員の保護者会も開かれていた。斎藤さんが、会の最中に顔を出すと保護者は大きな拍手で出迎えた。野球熱が高い壱岐島。昨秋、選抜出場がかかった大分県での九州大会に出発するときは、港で大漁旗を振って見送ったほどだ。

 選手の保護者は「ハンカチ王子」のことはもちろん知っている。「子どもがおなかの中にいるときに、斎藤さんが甲子園で活躍されていたんですよ」と話す選手の母親もいた。みんなで記念写真に収まった。

 斎藤さんは、投手陣のブルペンでの投球練習を見たあと、エースの浦上脩吾主将に話しかけた。「部員全員が壱岐島出身。中学校を卒業するときに島外に出る選択肢もあったと思うんですが、なぜ壱岐高を選んだのですか」

 浦上主将は「今まで壱岐から甲子園に行ったことがなかった。自分たちの代は(多くの選手が中学までに)九州大会や全国大会を経験しているので、全員が集まって壱岐高に残ったら甲子園にいけると思った」と応じた。

 斎藤さんは坂本徹監督(40)にも尋ねた。聞きたかったのは、1月24日に選抜出場が決まって以降のチームの状態についてだ。「選抜出場が決まって以降の選手の練習への気持ちの入り方は変わりましたか」

 坂本監督の答えは「喜びと同時にほっとしていた。『やっといけるんだ』と。壱岐高のよさは平常心。それをテーマにしてやっている。甲子園に出ようが出まいが、自分たちがやるべきことをやっているが、決まってからは目の色が変わってきた」。

 訪問を終えて、斎藤さんは「壱岐のよさを知ることができた。島の方たちの温かさや、島全体で甲子園に挑むんだという思いが感じられた」と結んだ。

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