米軍那覇軍港(那覇市)の沖縄県浦添市への移設計画で、防衛省沖縄防衛局は20日、埋め立て予定区域の地質を調べるボーリング調査を始めた。調査は来年まで続け、環境アセスメント(環境影響評価)を経て、埋め立て承認の手続きに入る。軍港移設は半世紀にわたって膠着(こうちゃく)していたが、今後作業が本格化する。
浦添市の西海岸沖ではこの日、ボーリング調査を行う台船が停泊していた。
沖縄防衛局は7月10日から埋め立て予定区域で不発弾の有無を調べる磁気探査を実施。ボーリング調査は2025年11月まで続ける見込みで、並行して事業が環境に及ぼす影響を調べる環境アセスメントも行われる。
那覇軍港の返還は1974年に日米が合意。県内移設の条件をめぐり膠着状態が続いたが、松本哲治・浦添市長が2015年に「容認」に転じ、玉城デニー知事も開発効果が高いとして容認。22年に国と県、那覇市、浦添市の4者が現行計画に合意した。
日米両政府が23年に合意した移設計画では、浦添市の西海岸沖合を埋め立て、約49ヘクタールの「T字形」の代替施設をつくり、事務所や倉庫など計17施設を整備する。13年に示された工程表によると、環境アセスに5年、埋め立て承認手続きに1年、工事に9年かかるとされ、今後この通りに進んだ場合、那覇軍港の返還は30年代後半になる見通し。
一方、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設と同様、海を埋め立てる事業に反対する世論も根強く、玉城氏を支える県政与党県議からも「那覇軍港は事実上、遊休化している。(移設ではなく)無条件撤去すべきだ」といった意見が出ている。地元住民らでつくる市民団体「美ら海を未来に残したいうちなーんちゅの会」のオンライン署名活動は23日現在で5万5千筆を超えている。(小野太郎、伊藤和行)