全国統一教会被害対策弁護団が、安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件から3年が経った8日、声明を発表した。事件を機に関心が高まった世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による高額献金などの被害について「ほとんどの被害者はいまだに救済されないままで、問題はまったく解決していない」と強調した。
弁護団は事件について「民主主義をも否定する犯行は決して許されない」として強く非難。その上で、弁護団が集団交渉を申し入れた207人の総額約60億円の被害について、教団が自ら対応せず別団体に交渉させるなど「不誠実な対応に終始してきた」と批判。「自ら生み出した被害を直視して被害者に真摯(しんし)に向き合う」よう教団に求めた。
全国霊感商法対策弁護士連絡会も同日、声明を発表し、「教団自身による被害者救済はまったく望めない」と指摘した。東京高裁で審理される国の解散命令請求に触れ、「早急な解散命令の確定と清算手続きによる救済が望まれる」と要望した。教団が、解散した場合、清算終了後の残りの財産の帰属先を天地正教と決めたことについて「違法な献金勧誘が天地正教の名称で継続されることが強く懸念される」と指摘。清算終了後も被害者が救済を得られるよう、適切な措置を講じることを政府に求めた。
旧統一教会などの信者の子らによる「宗教2世問題ネットワーク」も同日、声明を出した。
旧統一教会問題に関する法整備や賠償について「議論はいまだ道半ば」と指摘。教団による被害は元信者による高額献金だけでなく、「2世の精神的・経済的被害へも、十分な賠償が行われなければならず、宗教2世問題全体としても、いまだ根本的な解決には程遠い状態」とした。
2世の問題をめぐっては、こども家庭庁が2023年度に保護者による宗教の信仰などに起因する児童虐待に関する調査を実施。同ネットワークはこの調査によって、「宗教活動への従事や学校行事の制限など、子どもの日常生活や学校生活が制限される事例が多数発生している実態も明らかになった」と指摘。今回の声明で、国に対して「宗教」という言葉の入った相談窓口の周知、進学や就職、自立して生活するための支援など、宗教2世の自立をサポートする制度や仕組みの充実などを求めた。