Smiley face
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新刊「わたくし96歳#戦争反対」の見本を前に笑顔を見せる森田富美子さん(左)と長女の京子さん=2025年5月12日、東京都文京区、井手さゆり撮影

 森田富美子(ふみこ)さん(95)は長崎の原爆で両親と小学生の弟3人を亡くした。被爆体験をSNSで発信し始めたのは91歳の夏。そして戦後80年となる夏を前に、その記憶をまとめた一冊の本が4日に発売された。

 被爆体験についての投稿のきっかけは2020年8月9日、長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典での安倍晋三首相(当時)のあいさつだ。それは3日前の広島の式典でのあいさつとほぼ同じで、誠意がないと批判が巻き起こった。

 戦争や原爆について政治家たちは何も知ろうとしない。また戦争を繰り返すことになる――。こみあげた怒り。富美子さんは体験をツイッター(現X)でつぶやき始めた。それまで家族にも話さず、胸の奥にしまっていた記憶だった。

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森田富美子さんのXアカウント画面=2025年5月12日、東京都文京区、井手さゆり撮影

 富美子さんは長崎市に生まれた。女学校生だった16歳の時、学徒動員にかり出されていた造船工場で被爆した。自身は無事だったが、離れた自宅などにいた両親や弟たちは犠牲になった。自宅は爆心地からわずか200メートルのところにあった。

 その朝、新しいげたを出して…

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