A-stories 8がけ社会とまちの未来(2)

 人口減少が進む2040年。高齢化で社会の支え手はますます必要になるのに、現役世代は2割減る「8がけ社会」がやってきます。大都市の中で顕著な人口減に直面する神戸は、縮小する将来を見据えた策を打つ一方、激しい人口争奪戦の最中にあります。葛藤する神戸を通じて、持続可能なまちの未来を考えます。

 神戸市中心部から北西約15㌔。戸建てが整然と並ぶニュータウン「月が丘地区」唯一のスーパー「コープミニ月が丘店」の店頭に、購入実績を示すグラフが貼られて1年3カ月が経つ。

 売り上げの発破をかける従業員向けではない。購入後に袋詰めする客の目の前に貼られたグラフには、40万~60万円の1日ごとの売り上げ、日ごとの目標やその月の「目標達成日数」など住民向けの「ノルマ」とも取れる数字が並ぶ。末尾には、こんな一言が添えられていた。

 「末永く店舗を存続させるために支援をお願いします」

「コープミニ月が丘店」の店頭に貼ってある購入実績を示すグラフ=2024年6月22日午後1時46分、神戸市西区、杉山あかり撮影

 6月下旬のある日、買い物を済ませた女性住民は時折スマホでグラフを撮るといい、「LINEグループで地域の人に共有し、『買ってね』って促すんです」と話した。

 購入をやめれば唯一のスーパーがなくなる――。人口減を先取りする神戸市周縁部ではいま、消費者の姿が大きく変わろうとしている。

  • 神戸市外大生が考える 「神戸市の郊外は持続可能か」

 月が丘地区は1977年から約30年かけて、神戸市が山あいを切り開いて開発した。5月時点の住民は3266人。65歳以上が約4割を占める。移動手段が限られる高齢者にとって「コープさん」は欠かせない生活手段となって久しい。

 細り続ける住民に対し、コープこうべは昨年4月、こう通知した。

住民主導で始まった「買い支え」

 月が丘店を「営業終了候補店…

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