菊池恵楓園に保管されていた「虹波」。ガラスの容器のなかに青黒い粉が確認できる=2022年12月8日午後2時8分、熊本県合志市、大貫聡子撮影

 戦中から戦後にかけて、国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園」(熊本県合志市)の入所者に、開発中の薬剤「虹波(こうは)」の投与試験が繰り返されていた問題で、少なくとも他の5カ所の国立療養施設でも、同時期に薬の投与が行われていたことが、朝日新聞の取材でわかった。昨年の恵楓園の中間報告を受けて、各施設で調査の動きもあるが、施設差が大きい現状がある。

 朝日新聞が、2024年9月から今年6月にかけて、菊池恵楓園を除く国立の12療養施設などに問い合わせたところ、保管資料や入所者のカルテなどから、国立駿河療養所(静岡県御殿場市)と大島青松園(高松市)、多磨全生園(東京都東村山市)、長島愛生園(岡山県瀬戸内市)、星塚敬愛園(鹿児島県鹿屋市)での投与が確認された。

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 このうち駿河療養所は、退所者を含む全入所者998人のカルテを確認する作業を進めている。北島信一所長によると、保管されている戦後(昭和20年代)のカルテに「虹波」の文字が確認できた。大量の個人情報を含むため、守秘義務が課された職員が業務の傍ら1枚ずつ目視で確認しながら作業をしており、「全容解明には時間がかかる」という。

 カルテの確認は、菊池恵楓園での報告書を受けて駿河での状況を知るために始めたが、北島さんは「今後も未解明の事実が明らかになる可能性がある。今のうちにカルテや文書保管のルールづくりをする必要があるのではないか」と話す。

 入所者自治会「駿河会」が1…

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