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説明に耳を傾けてメモを取る子どもたち=2024年6月14日、福岡県朝倉市、池田良撮影
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 記録的な大雨で福岡、大分両県で関連死を含めて40人が亡くなり、2人が行方不明となった2017年7月の九州北部豪雨から7年が過ぎた。死亡、行方不明者が35人に及んだ福岡県朝倉市では、道路や橋などのインフラはほぼ復旧したが過疎化が進む。復興へ歩む中、災害の経験をまちの活性化に生かそうと有志が動いている。

 6月14日、福岡市内の小学5年生約120人が、土砂災害があった朝倉市の久喜宮(くぐみや)地区の山間部を訪れていた。

 同市で復興支援に取り組む平川文(ぶん)さん(45)が先導し、今も流木や土砂が堆積(たいせき)する河川や、復旧で土地がかさ上げされた集落などを回るスタディーツアーだ。

 ツアーは学校や社会福祉協議会などの依頼を受けて実施し、平川さんの活動に賛同する被災者が協力する。その一人で自宅が全壊し、災害公営住宅で暮らす塚本潔子さん(76)は、自宅があった跡地近くで子どもたちを出迎えた。

 7年前、自宅に多くの流木が押し寄せた写真を子どもたちに示し、「強い雨が降ったら避難してください」と訴えた。参加した大野希穂さん(11)は「大雨はこわいと思った。危ないと思ったらすぐに逃げます」と話した。

 このツアーを始めようと平川さんが考えたのも、九州北部豪雨がきっかけだった。

 市内にある平川さんの自宅は被災を免れた。当時、無職だった平川さんは被災者の力になろうと、被害が大きかった集落に入り、泥かきなどの手伝いをした。

 そこで梨農家の高齢の夫婦と出会った。夫婦の農園は9反のうち7反が土砂にのまれた。出荷先の道の駅も被災し、育てた多くの梨と販路を失った2人は途方に暮れていた。

 梨は集落の特産品。平川さんは、残った1千個余りの梨を買い取り市外の復興支援などの催事で売ると、ほぼ売り切れた。「それまで、人のために何かしようと思ったことはなかった。人生観が変わった」と振り返る。

 被災地を訪ねて家財の運び出しなどをするなかで多くの被災者やボランティアの人たちと接し、地元の人と関わる機会が増えて、故郷のまちづくりに関心がわいた。

 災害の発生当初は、大学生ら若者が被災地を訪れ支援してくれたが、復旧とともにまちを離れていった。そこで、被災地での体験型の防災学習を通じて若者らに再び足を運んでもらおうと、有志と一般社団法人「Camp」を立ち上げてスタディーツアーを始めることにした。

 22年から始めたツアーはこれまでに約50回実施し、約1千人が参加した。平川さんは「被災地から発信する防災で人を呼び込み、まちへの関心を持ってもらえたら」と、交流人口の増加につながることを期待する。(池田良)

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