特別柵に収容された鹿たち=2023年9月、奈良市春日野町、小宮路勝撮影

机美鈴・奈良総局記者

 奈良に赴任して1年。職場である県庁の記者クラブに出勤する道すがら、何頭もの鹿と出くわす。

 せんべいをねだり、裁判所の中庭でくつろぎ、ところかまわずフンをする。その姿に、「お前もまあ気楽にな」と言われているようで、気持ちが和む。鹿とともにある、唯一無二の都市だと実感する。

 奈良公園には約1200頭の鹿が生息するが、その一角で別途、200頭余りが隔離されていることはあまり知られてこなかった。

 「特別柵」と呼ばれる柵内に収容されるのは、畑を荒らすなどして捕まった鹿たち。いったん入ると、原則死ぬまで出られない。

 鹿の世話にあたる「奈良の鹿愛護会」の専属獣医師である丸子理恵氏が昨夏、特別柵の鹿の衰弱ぶりを告発。やせてあばらの浮いた鹿の写真とともに、全国区のニュースになった。

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