(11日、プロ野球 阪神タイガース1―0中日ドラゴンズ)
満員の甲子園のボルテージが一段と上がった。
六回2死一、三塁のピンチで、阪神の湯浅京己(あつき)がマウンドに上がった時だ。
4番・中田翔には四球を許して満塁とし、続く高橋周平にも2ボールとしたが、「逃げたわけじゃない」と慌てなかった。
3球目、146キロ直球で一ゴロにねじ伏せた。
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2022年に最優秀中継ぎのタイトルを獲得した25歳。だが、その後、体に違和感が出るようになった。
昨年の春季キャンプで違和感を覚え、3月には右足に力が入らない状態になった。7月に入って「胸椎(きょうつい)黄色靱帯(じんたい)骨化症」と診断された。
背骨付近の靱帯が硬化して神経を圧迫する、国指定の難病。告げられた時は「うわぁ、まじか……」と不安になった。
8月に手術してからはリハビリに励んだ。福島・聖光学院高時代は成長痛で思うようにプレーできず、阪神入団後も腰の分離症に悩まされた。これまでも、何度もはい上がってきた。
今年4月29日の中日戦で2季ぶりの1軍のマウンドに立った。最初はビハインドの展開で、次第に大量リードの場面で。そしてこの日は、復帰後で一番タフな場面を任された。
これで6試合無失点。藤川球児監督は「たくさん、彼の経験がありますから。そのあたりが生きたんじゃないか」とたたえた。
ファンが期待するのは、かつてのようにセットアッパーとして右腕を振るう湯浅の姿だろう。
本人は「一つひとつの積み重ね。自分の中でできることをやるだけ」と言いつつ、「こういう(競った)展開でどんどん投げていって、信頼を得られるように頑張りたい」。
ひとこと
藤川監督(神) 一回の佐藤輝の適時打による1点を守っての勝利に「みんな頑張ってくれた。(佐藤輝は)状態よくやってくれている」。
伊原(神) 六回途中まで無失点で2勝目。「立ち上がりからテンポよく投げられた。途中で変わるのは中継ぎのみなさんに負担がかかる。今後の課題」
岩崎(神) 今季10セーブ目で、プロ通算100セーブまであと1に。「次の場面で、しっかり決められるようにと思います」