【ニュートンから】ペット医療の最前線(4)

ヒトでは,個体がもつ全遺伝情報である「ゲノム」を病気の予防や診断,治療に活用する「ゲノム医療」が普及しつつある。近年,ペットの獣医療でもこれと同様の「ゲノム獣医療」という試みが進められている。

 イヌは78本(39対),ネコは38本(19対)の染色体をもち,その上に遺伝情報がきざまれている。イヌのゲノムは2005年に,ネコのゲノムは2007年にそれぞれ解読され,ゲノム配列を用いて遺伝性疾患の関連遺伝子をみつける研究が進んできている。

 遺伝性疾患は,遺伝子などに変異が生じることでおきる病気だ。イヌやネコでは,品種を作成・維持するために,血縁が近い個体どうしでの交配がよく行われる。そのため,遺伝子の変異が世代をこえて引きつがれ,品種特有の遺伝性疾患を発症しやすいとされる。たとえば,イヌではミニチュア・ダックスフントが進行性網膜萎縮症を,ウェルシュ・コーギーが変性性脊髄症を発症しやすく,ネコではメインクーンは肥大型心筋症,スコティッシュ・フォールドは骨軟骨異形成症を発症しやすいといったことが知られている。

 近年では,こうした遺伝性疾…

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