医療DX(デジタル化)の一環として国が普及をめざす電子処方箋(せん)について、厚生労働省は3日、半数以上の医療機関が「現時点で導入予定はない」と調査に回答したと公表した。すでに導入した医療機関への質問では、メリットよりもデメリットに関する回答が多く集まった。
電子処方箋は7割近くの薬局で導入が進む一方、医療機関の導入率は1割に満たない。
調査は全国の医療機関、薬局を対象とし、2月10~19日に実施。電子処方箋を導入していない医療機関の58.7%が「現時点で導入予定はない」と答えた。病院に限れば44.6%だったが、医科診療所は53.8%、歯科診療所は74.2%に上った。
導入していない理由として、病院からは「システム導入・改修費用が高額」「導入する経済的メリットを感じない」といった回答が多かった。
電子処方箋を導入した医療機関にデメリットを複数回答可で尋ねたところ、病院からは「電子と紙が共存することにより業務が煩雑化する」「電子処方箋を希望する患者さんが少ない」など計1033件の回答が寄せられた。
一方、メリットに関しては「医療DX推進体制整備加算が算定できる」が最も多く、回答数は計622件にとどまった。
電子処方箋をめぐっては、医師が処方した薬とは別の薬が薬局に伝わるトラブルが7件報告された。薬につける番号のひもづけに誤りがあったことが原因で、厚労省は2024年12月に一時、システムを停止した。こうしたトラブルを受け、6.6%の病院が「導入を見送ることにした」と答えた。
電子処方箋は23年1月から運用が始まった。国は25年3月末までにオンライン資格確認システムを導入しているすべての医療機関と薬局で運用をめざしていたが、導入率の低迷を受け、今年夏をめどに新たな目標を設定するとしている。