映画「わたしの居場所」のワンシーン=マヤフィルム提供

 阪神・淡路大震災から来月で30年を迎えるのを前に、神戸在住のアーティストや俳優らが短編映画「わたしの居場所」を制作した。いまの神戸を舞台に、人と人とがつながる大切さが描かれている。発災から約1年の能登半島地震の被災地への思いも込めた。来月11日から神戸市内で公開される。

公園に避難「家族みたいにあったかかった」

 震災から30年後の神戸に住む女性(24)が主人公。東京から転居してきて1年、自宅でパソコンに向かって仕事をし、人と対面する機会が少ない毎日を過ごしている。人付き合いが苦手だが、それぞれに事情を抱えた様々な世代の人たちが集まるカフェを訪れたことをきっかけに、自分の居場所を見つける28分のストーリーだ。

 監督を務めたのは浜嶋仁美さん(42)。小学生の時に阪神大震災に遭い、神戸市灘区の自宅が半壊状態に。半年間、小学校や親戚の家に避難しながら電車で通学した。いずれは震災をテーマに映画を作りたい思いを胸に、米国や東京で映像の仕事を続けてきたという。

 今回の作品は今年6~9月、地域の人の交流の場になっている水道筋のカフェなど灘区を中心に撮影した。浜嶋さんは「震災30年の神戸の姿が、能登地震の被災者の方々に前向きなメッセージになればという願いを込めた」と話す。

 映画の挿入曲「会下山」は、音楽スタジオ代表の土井亮さん=神戸市=が手がけた。被災直後の神戸の景色を見て浮かんだメロディーを紡いだ鎮魂曲を、今回の作品のために収録したものだ。「これ(映画)をきっかけに災害への備えの大切さを感じてもらえたら」

 カフェの店長役で出演する俳優の堀内正美さん(74)は発災数日後、ボランティアを受け入れる市民団体「がんばろう‼神戸」を立ち上げた。「阪神淡路大震災1・17希望の灯(あか)り」(HANDS)初代代表も務めるなど、被災者支援や震災の教訓を伝える活動をしてきた。

 堀内さんは映画のワンシーンで、震災直後に炊き出しをした時の写真を主人公に見せながらこう伝える。「あのとき、本当にたくさんの人が公園に避難してきました。でもね、他人同士なのに、家族みたいにあったかかったんですよ」「本当にしんどかったけど、みんなで助け合ったから、今がある。そんな気がしますね」。堀内さんは言う。「ささやかなドラマだけれど、大きなテーマを描いていると思う」

1月11日から神戸市で上映

 1月11~17日に神戸市中央区の元町映画館で公開される。1千円。映画のエンディングには、神戸出身のバンド「とどめの一発」による能登への応援ソングも流れ、出演者や学生の語り部グループのメンバーらが曲に合わせてダンスを披露する。来年以降石川県での上映も検討している。

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