和紙の切れ端、使わないおもちゃ、コロナ後に不要になったフェースシールド。そんな材料を使い、オリジナルの獅子舞のお面を作ろうというイベントが鳥取市で開かれた。企画したのは神奈川県のキャンパスで学ぶ青山学院大の学生たちだ。
「麒麟(きりん)獅子を知ってるっていうお友だち、どれぐらいいますかー?」。大学生の問いかけに、数人の子どもたちが手を挙げた。麒麟獅子は鳥取市や周辺地域に伝わる民俗芸能で、霊獣「麒麟」に扮して舞う獅子舞だ。
鳥取市にある童謡やおもちゃがテーマのミュージアム「わらべ館」。イベントは9月7日に開かれ、市内外の2歳~小学6年の子どもたちと保護者ら27人が参加。大学生らと一緒に、麒麟獅子をイメージしたお面づくりに取り組んだ。
「髪の毛をピンクにしたい」「いいよ。たくさんつけよう」。子どもたちの真剣なまなざしと、大学生たちの穏やかな視線が交わり合う。小学1年の山根涼正さん(7)は「難しかったけど、うまくできた。家に飾りたい」とお面を見つめた。
お面の材料は、コロナ禍に鳥取大などが開発した使い捨ての紙製フェースシールド▽県東部特産の伝統工芸「因州和紙」の切れ端▽わらべ館の壊れたおもちゃなどだ。捨てられるものに手を加えて価値を高める「アップサイクル」を意識しながら、「地元にあるもの」にこだわったという。
イベントを企画したのは青学大コミュニティ人間科学部(相模原市)の3年生9人。ある地域の特性や伝統文化を詳しく調べた上で、実際に現地に出向いて活動する「地域実習」だ。わらべ館は2021年から実習を毎年受け入れている。昨年までは同館の催しを学生が手伝っていたが、今年は学生自身が企画や運営に取り組んだ。
地域づくりの手法を学ぶ学生たちと、地域に根ざした文化施設がコラボしたイベント。学生のリーダーを務めた永留(ながとめ)みりあさん(20)は「少子高齢化が進む地域で異世代の交流を深めながら、地域の伝統文化を次世代に継承する企画にしたかった」と振り返る。
わらべ館の提案で、イベントには同館でおもちゃ修理などを担うボランティアスタッフ3人と、「因幡麒麟獅子舞の会」に所属する保存会のメンバー2人も参加。子どもたちに実物の麒麟獅子をかぶってもらうコーナーも設けた。ボランティアスタッフの西尾新治さん(75)は「いい取り組みだと思う。私、青学大の出身です」と笑った。
青学大の大木真徳(まさのり)准教授は「学生の受け入れや企画内容の提案など、わらべ館には大変お世話になった。地域で活動する人たちや地域の文化を学生たちが体験的に理解でき、教室では得られない学びを経験できた」と話した。(富田祥広)