南日本ハムが作る非常食用の「お肉のレトルト」。左上から時計回りに「煮込みハンバーグ」「鶏と根菜のうま煮」「やきとり」「ポークソーセージステーキ」=2025年6月11日午後2時21分、日向市財光寺、星乃勇介撮影

 乾パンに乾燥米、シリアルに氷砂糖。非常食のラインアップはどうしても、炭水化物に偏りがちだ。ただ、避難生活が長引けば、時にお肉も食べたくなる。その思いに応えるレトルトを、宮崎県日向市の南日本ハムが作っている。しかも、自衛隊の「戦闘糧食」がベースになっているという。どんなものか、話を聞いた。

 対応してくれたのは、加工食品開発部長の中島慶人さん(47)と、総務人事課の安藤旭信さん(29)。ポークソーセージステーキ▽煮込みハンバーグ▽やきとり▽鶏と根菜のうま煮の全4種を試食させてもらった。

 まずはステーキ。直径約9センチ、厚さ約1.5センチ。超絶的迫力。ハンバーグはあらびき感満載。玉ネギがしゃきしゃき。やきとりはお焦げ付き。ショウガの香りが食欲をそそる。うま煮は鶏が香ばしい。根菜も繊維質しっかり。もぐもぐ。ノートに必死でつづる。

 2人の説明では、元々は自衛隊に納めていたものが土台。「非常食は炭水化物が多い。たんぱく質も提案できないか」と声が上がり、隊員に人気の4種類を2022年から売り出した。

 「戦闘糧食」と違う点は、塩分を調整し、一般の消費者にも食べやすい味つけにしたこと。そして賞味期限を通常のレトルトが1~2年のところ、5年半にしたこと。湯煎するとよりおいしさが増すが、そのままでもOKだ。

 パックには被災地などで活動する自衛隊の写真を入れた。24年は、1年間で4種類合計66万パック売れた。ハンバーグがトップだという。

 工場のある日向市は、南海トラフの巨大地震の際、津波で大きな被害が予想されている。中島さんも気を張る。14年前の東日本大震災の際、茨城県筑西市の工場で働いていたからだ。

 遠くから地鳴りが聞こえた後、大きな揺れ。外に出たら塀は倒れ、工場は停電。今春、日向に転勤してきたが、避難場所は家族と相談済みだ。

 そして、防災セットにはもちろん、自社のお肉レトルト。隙間に詰め込んでいる。「かさばらず、軽い。『災害だから我慢』ではなく、少しでもおいしいものを食べ、みんなで頑張る。そんな商品を目指したい」

 同社はこの2月、備蓄用として市に1千食贈った。希望小売価格は1パック598円(税込み)。量販店の防災コーナーのほか、通販でも扱っている。

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