韓国で見たインクルーシブ(すべてを包み込む)の風景は、障害者の人権へのやさしさに満ちていた。愛知県大府市で活動する多世代交流の市民団体「マナビのWA」代表で、特別支援学校教諭の矢野良太さん(37)は、障害者教育の先進的な取り組みを視察するため韓国を訪れた。そこで感じたのは、国家として人権を守るための制度を用意することの大切さだった。
矢野さんは昨年3月25~28日、教員らでつくるNPO「スクール・ボイス・プロジェクト」の企画で韓国を訪れた。障害者団体の代表やスクールソーシャルワーカー、人権問題の研究者、教育専門家らとともに参加。韓国の障害者団体「DPIコリア」、国家人権委員会、障害者教育を担当する国立特殊教育院、障害を問わない統合教育のモデル校になっているソウル教育大学付属小学校などを視察した。
まず衝撃を受けたのは、街のバリアフリー施設の充実だ。
地下鉄は、ホームと車両の間に段差や隙間がなく、車いすがそのまま乗ることができる。日本のように駅員がスロープを用意しなくてもいい。高齢者や子ども、ベビーカーも安全だ。電車の中も、優先席は広いメインの場所に設けられて人目につきやすく、利用しやすい。
地下鉄の駅のエレベーターは…