韓国の検察は8日、「非常戒厳」の宣布をめぐり内乱罪で逮捕、起訴された尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の釈放を指示した。ソウル中央地裁が7日、大統領の勾留取り消し請求を認める決定をし、検察は即時抗告するか検討したが、断念した。これを受けて尹大統領は8日午後5時50分(日本時間同)前、拘置所を出た。大統領公邸に戻るとみられ、在宅で刑事裁判を受けることになる。
尹大統領は拘置所の門から歩いて出て、集まっていた支持者らに歩きながら手を振った。釈放によって、捜査を違法だと主張する尹大統領側や支持者らが勢いづく可能性がある。憲法裁判所が弾劾(だんがい)審判で近く尹大統領の罷免(ひめん)の可否の判断を示すとみられるが、弾劾をめぐる社会の対立もより深まりそうだ。
尹大統領は1月15日に拘束令状に基づいて身柄を拘束され、19日に正式に逮捕された。検察は26日に起訴したが、弁護側はその時点では身柄を拘束できる期間を過ぎており、違法だなどと主張していた。
拘束期間の算定の仕方をめぐり、弁護側と検察側の主張が対立していたが、同地裁は決定で拘束期間が満了した状態で起訴されたと指摘し、拘束が適法と見ることは難しいとした。
また、尹大統領の弁護団は、捜査を手がけた高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)には内乱罪の捜査権はないとも主張してきた。同地裁は決定で捜査権などについての判断は避ける一方、「捜査過程の適法性に関する疑問の余地を解消することが望ましい」とし、勾留取り消し請求を認める理由の一つとしていた。
今後の刑事裁判ではこうした点も論点になるとみられる。
起訴状によると、尹大統領は昨年12月、憲法秩序を乱す目的で非常戒厳を宣布した。検察は尹大統領を内乱の「首謀者」と位置付けるが、尹大統領側は「内乱には当たらない」と反論している。