横浜市消防局の出初め式に参加した清野菜名さん(手前)=2025年1月12日、横浜市中区新港1丁目、加藤美帆撮影

 フジテレビのドラマ「119 エマージェンシーコール」は、119番通報を受ける消防の通信指令センターが舞台だ。撮影に協力している横浜市消防局には、ドラマを通じて伝えたいことがある。

 ドラマで清野菜名さんが演じる主人公は、119番通報に応答し、救急車や消防車の出動を指令する横浜市消防局司令課3係の指令管制員(ディスパッチャー)だ。

 「私たちは裏方。当初はドラマになるのか、心配になりました」と話すのは、「本物」の市消防局司令課司令3係長の高橋円佳さん(48)。指令管制員のキャリアは計10年になる。

 高橋さんは2000年に市消防局に入り、主に救急の現場で経験を積み、初めて司令課に配属されたときは「最初は怖かった」と振り返る。

「景色が見えるようになった」

 救急の仕事では、出動前に現場の状況や傷病者の性別、年齢などの情報が入っている。でも、指令管制員は電話をとるまで火災か病気かもわからない。「事前情報ゼロ」で現場に出向くようなもの。しかも、音声だけが頼みの綱だ。

 でも、緊張する高橋さんに当時の上司はこう言った。「そのうち景色が見えるようになるから、大丈夫だよ」

 実際、通報者の背後の音に耳を澄ますと、現場の状況を思い浮かべることができるようになった。

 通報への対応後に、実際の現場を確認しに行くこともある。

 たとえば、高速道路のジャンクション。似た景色が続き、通報者も自分がどこにいるのかわからなくなりがちだ。次の対応の際に生かすため、勤務の合間に現地を確認しに行き、目印になるものを探したという。

感謝されることはない、それでも

 認知症などで通報者とうまく…

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