立命館守山中学・高校(滋賀県守山市)が作った、インターネット上の仮想空間「メタバース」上の「デジタル保健室」が、ICT(情報関連技術)のコンテストで受賞した。アバターで入室し、AIや養護教諭に相談する仕組み。場所や時間の制約を超えて、生徒の不安解消に役立つ点が評価された。
デジタル保健室は2024年1月から運用をスタート。学校の保健室をメタバース上に再現し、仮想空間上の分身「アバター」で入室する。「頭が痛いがどうしたらいいか」「睡眠時間の相談をしたい」「部活のことで悩んでいる」など、学校生活での不安や体調についてAIに相談し、回答を得られる。相談内容は養護教諭が確認している。
「相談のハードル下げて、ほっとできる居場所に」
同校の養護教諭、山村和恵さんによると、コロナ禍以降、保健室の利用者は増加。従来の外科や内科的な理由だけでなく、心に不安を感じている生徒が増えた。授業で重視されるグループワークや発表がストレスの一因になっているケースもあるという。コロナ禍後もかつての約2倍の生徒が保健室に来室し、養護教諭のニーズは高止まりしているという。
また、「保健室に入るところを見られたくない」という生徒の声もあり、「対面利用に限らず利用しやすく、ほっとできる居場所」として、生徒と相談しながら「デジタル保健室」を作り上げた。
現在は、保健室にあるタブレット端末3台からのみアクセスできるが、今後は生徒が学校で使っている端末からもアクセスできるよう検討を進めている。長期間欠席している生徒とのコミュニケーションツールとしても役立ったという。
デジタル保健室は昨年度、一般社団法人日本教育情報化振興会の「ICT夢コンテスト」で文部科学大臣賞(地域部門)を受賞した。山村さんは、「気軽にアクセスできて、相談のハードルが下がる。ほっとできて役立つ居場所になるよう、さらに工夫を重ねていきたい」と話している。