(14日、第107回全国高校野球選手権石川大会2回戦 日本航空石川11―0鹿西=五回コールド)
8点を追いかける四回表、鹿西の春成勇希選手(3年)が先頭で打席に立った。「大差がついている中で、チームを盛り上げたい」。低めの球を捉えると、センター方向へ打球が抜けていくのが見えた。春成選手にとって、公式戦初めての安打となった。
高校から野球を始めた。バスケットボール部だった中学時代、2019年に夏の甲子園で準優勝した星稜の試合をテレビで見た。バットに球が当たる音。アウト一つ一つにチームが盛り上がる一体感。そんな野球に憧れた。高校で野球部への入部を決めた。
しかし、野球はバスケと違い、バットやグラブといった道具を使うスポーツ。「扱いが難しくて、打球を前に飛ばすのに苦労した」と話す。スイングの軌道を確認しながら、自宅でも黙々と素振りをした。休日で多い日は700回。それでも、公式戦でこれまで、ヒットは出ていなかった。
この日記録した念願の安打。しかし、一塁を回って二塁をうかがうと「思ったより早くセンターからボールがかえってきた」。強豪・日本航空石川の素早い好送球の間に帰塁できず、タッチアウト。「うれしいというよりも、悔しい」と話した。
五回コールドで敗れたが、春成選手は「諦めずに最後まで、自分のできることをやり続けるという『自分の野球』ができました」と笑顔で語った。