ドレッシングの開発に携わった生徒たち=2024年4月6日午前11時15分、大分市公園通り西2丁目、徳山徹撮影
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 楊志館高校(大分市)調理科の生徒たちが、イオン九州などと手を組み、見た目が良くないなどの理由で「規格外」となったトマトを生かしたドレッシングを開発した。食品ロスを減らす試みで、キャッチフレーズは「未来のシェフがつくった! 青春の味」。6日から大分県内のイオン、マックスバリュの計19店で販売されている。

 「規格外トマトで商品を開発しませんか」。楊志館高校調理科長の渡辺有一教諭(44)がイオン九州の知人から声をかけられたのは昨年9月。SDGs(持続可能な開発目標)の考えに賛同した同校のほか、調味料製造などでノウハウを持つ、創業約170年の老舗「ユワキヤ醬油(大分市)」も協力することになった。

 使うのはイオンのグループ会社が県内農場で生産したうち、形がいびつだったりひび割れがあったりして一般向け商品になりにくいトマト。収穫の1割ほどはこうしたトマトで、格安で関係者に売られるのもあるが、半分は廃棄されてきたという。

 3者は合同会議を重ね、開発や販売をしやすいドレッシングをつくることにした。同校調理科の全生徒約170人が意見を出し合い、今年2月中旬までにガーリックの風味を利かせたレシピと、「まるまる赤トマト 赤獲(あかど)れ」の商品名が決まった。

 ユワキヤ醬油は10種類ほどの試作品をつくったという。「もっとトマトの風味を抑えて」。試食した生徒らのそんなリクエストに応えてニンニクやバジルを加えるなど工夫を凝らした。

 成分のうちトマトの占める割合は約25%。門脇正幸社長(66)は「トマトの風味をいかに適度に抑えるかがポイントだった。トマト嫌いの人も食べられ、ハンバーグやパスタのソースなど多様な使い方が出来るドレッシングになった」と喜ぶ。

 まずは約120キロのトマトで1千本をつくった。価格は398円(税抜き)。当面はイオンで販売するが、「いずれは道の駅などにも販路を広げられたら」。

 大分市公園通り西2丁目のイオンパークプレイス大分店。発売記念のセレモニーが6日あり、その後、1~3年(当時)の各クラスから選ばれて全体会議に参加してきた生徒約10人が買い物客に「試食しませんか」と呼びかけた。

 全体会議に参加してきた調理科3年生の児玉愛未(あいみ)さん(17)は取材に「一から何かをつくるのは難しい半面、楽しかった」と振り返る。将来は管理栄養士を志望している。今回の経験について「管理栄養士になれば病院で患者の食事のメニューを考えることがあるかも。そんな仕事にもつながるのでは」。

 同じ調理科3年生の玉井優季さん(17)は「パンチの効いたガーリックの特徴ある味に仕上がった」と感じている。「将来は和食のカフェ店を出したい。今回の経験は自分の店のメニューづくりに役立つかも」と話した。

 イオン九州エリア推進部の丸山譲・大分県担当部長(67)は「食品ロスをなくすという生産者の思いを生かす製品になった。同じ思いのお客さんにも共感してもらえるのでは」と期待をにじませる。(徳山徹)

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