高校野球が大きく変わる。来春の公式戦から指名打者(DH)制が採用されることが1日、日本高校野球連盟の理事会で全会一致で決まった。
DH制を採用するかどうかは、試合ごとにチームが決めることができる。降板した先発投手がDHとして出場し続けられる、いわゆる「大谷ルール」も適用される。
日本高野連の井本亘事務局長は記者会見で、「夏の大会になれば、投手の疲労はかなり大きい。すこしでも軽減されれば」と期待を込める。
また、守備が苦手でも打撃は得意という選手ら、DH制によってこれまで試合に出られなかった選手の出場チャンスが増える点も期待される。
「日々の厳しい練習も、試合に出ることを目標にやっている」と井本事務局長。野球人口の減少にも言及し、「試合に出る機会を作ることで、もう少し続けよう、出るチャンスがあるんじゃないかと、思う部員がいるかもしれない」と話した。
「野球がおもしろくなる」
DH制の導入について、現場の指導者から前向きな感想が相次いだ。
昨夏の甲子園で優勝した京都国際の小牧憲継監督は「英断だと思います」と歓迎。「野球を諦めてしまう子って、投げられない(送球に不安がある)。それが捕れない、打てないという悪循環に陥ってしまう」とし、「試合に出られるチャンスを与えられるというのは、野球人口に関わる問題じゃないかな」とした。
今春の選抜を制した横浜(神奈川)の村田浩明監督は、練習試合ではDH制を採用しているという。「なにより投手に(死球などで)けがをさせたくない。野球も変わるし、投手のレベルも上がる」と見る。
今夏の全国選手権に出場する花巻東(岩手)の佐々木洋監督は「すばらしい取り組み。監督としてというか、教育者としても多くの生徒を試合に出したい気持ちはある。守備が苦手で打撃が良い生徒も、個性を生かすという意味では、いろんなタイプの選手が出る機会が広がる」。
明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督はDH制が採用された2023年のU18(18歳以下)ワールドカップ(W杯)で高校日本代表の監督を務めた。
「投手を代えるときに、次の打席に回るかどうかを気にする必要がなくなって、ここぞの場面で継投の決断ができた」と振り返る。「ベンチ入りメンバーにも投手を多く入れることになる。野球がおもしろくなるよ」と期待した。
沖縄尚学の比嘉公也監督は「打撃が優れた投手はDH制を使わないし、投げることに専念させたい投手はDH制を使える。戦略の幅が広がる」と語る。
現役時代は投手。1999年の選抜大会優勝に貢献した。指導者としてはDH制が採用されたU18W杯で投手コーチを務めた。
「投手目線で言えば、打てる選手が1人増えて打線の切れ目がなくなる印象を持つかも知れない」としたが、一方で、「打線の9人全員が調子が良いことはない。きっちりアウトをとるべき選手を試合中に見定めることが大事になる」。
天理(奈良)の藤原忠理監督は大学野球で30年ほど指導しており、DH制の勝手をよく知る。「投手の回復がスムーズになる」とメリットを挙げ、「(野手は)選手自身が打力だけを重んじたメンバー入りを目標にできる」と話した。