医療費の患者負担を抑える「高額療養費制度」で、石破茂首相は7日、今年8月からの自己負担上限額引き上げを見送る方針を示した。「命が削られる」といった患者の訴えが3回目の見直しにつながった形だが、当事者には不安が残る。
「とりあえず意見を採り入れたましたよ、という感じかな」
茨城県内の30代パート女性は、今回の見送りを冷静に受け止める。「とりあえずみなさんの意見を採り入れましたよ、という感じかな」
15年ほど前から、皮膚が赤く盛り上がるなどの「尋常性乾癬(かんせん)」の症状が出た。全身の関節に痛みが出始め、「乾癬性関節炎」と診断された。
毎日、1錠4千円を超える治療薬を服用しなければならない。他の薬や診察代を合わせると、保険を適用しても月の負担額は10万円を超えるが、高額療養費制度で月5万7600円に抑えられている。
生活は苦しい。週休3日の時短勤務で月収は9万円ほど。実家暮らしで高齢の母親からの援助があるが、収入の半分ほどが治療費の支払いになる。
長時間働くことは難しい。働き過ぎて症状が悪化すれば、「40度の熱があるインフルエンザに加え、全身をハンマーで殴られていながらおのでグサグサ刺されたような痛み」に襲われる。
今回の上限引き上げの議論では、自分の状況を当てはめると月の支払いが3千円増える見通しだ。病気の完治は難しいとされ、生涯にわたって負担は続く。
治療費のためにぜいたくは控えている。「3千円は私にとってボーダーを超えてしまうもの」。今後の議論で引き上げが決まったら、「治療をやめるということも選択肢にある」と言う。乾癬性関節炎は心筋梗塞(こうそく)のリスクが高まる病気で、その不安を抱えながら生活することになる。
乳がん経験者、「引き上げで将来諦めることのないように」
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