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山本真司さんが巻いた土佐毛針「孔雀(くじゃく)たて玉虫」
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 清流に身を躍らせるその美しさから「清流の女王」と呼ばれるアユ。今年もアユ釣り解禁の知らせが、初夏の訪れを各地に告げている。

 近年は、生きたアユをおとりに使う「友釣り」が主流だが、高知県では伝統的な「毛針釣り」も愛されていると聞いた。

 坂本龍馬も泳いだという川のそばに、1軒だけ残った「土佐毛針」の職人の店を訪ねた。

 まるで鏡のように穏やかに高知市内を流れる鏡川。その川沿いに、「鮎(あゆ)毛針」の看板を掲げた店があった。

 土佐毛針は、彩り豊かな鳥の羽根を、長さ1センチにも満たない小さな針に巻いた擬餌針(ぎじばり)だ。クジャクや白鳥、キジ、ヤマドリなどの羽根が使われ、色や形状などその種類は数百に及ぶ。

 それを繊細な手作業で作っているのが、「高橋毛針」3代目の職人、山本真司さん(52)だ。

 2階の作業場で、ピンセットのような道具を使って黙々と針に羽根を巻き付けていく。

 「羽根の表と裏を見分け、光沢のある表側の毛がフワッと広がるように針に巻くんです」と教えてくれた。

昭和初期に夫婦で生み出した技を継ぐ

 店は、山本さんの義理の祖母にあたる故・高橋千代さんが1930(昭和5)年に創業した。千代さんが巻いた毛針を使って夫が鏡川で試し釣りし、よく釣れる毛針を夫婦で生みだしてきたという。

 山本さんは愛媛県出身の元会社員。26歳の時、赴任先の高知で、千代さんの孫の香百合(かゆり)さん(49)と結婚した。

 もともと魚釣りの趣味はなく…

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